「技術で勝って経営で負ける」は悪いことか?


12年ほど使っていた腕時計の文字盤のカバーガラスが破損してしまいました。どこかにぶつけた記憶はありませんが、老朽化していたのでしょうか。修理することも考えましたが、これを機に新しい時計を購入することにしました。


さて何を買おうか?と思って調べていると、、、ソーラー電波時計というものが腕時計の主流になってきているようですね。太陽電池で動くため電池交換不要、電波を受信し時刻を補正するため時刻調整も不要という優れ物です。
シチズンセイコー、カシオが作っており、種類も豊富、値段も手ごろです。太陽電池式時計というと、セルが見えるおもちゃのような時計を想像していましたが、デザインにも全く違和感を感じませんでした。技術の飛躍的な進歩を伺わせます。いわゆる”ブランド時計”には興味がないので、技術が詰まっているソーラー電波時計の中から選ぶことに決めました。


ヨドバシカメラで物色していると店員さんに声をかけられました。せっかくなので色々話を聞いてみました。

●最近はソーラー電波時計が増えているのか?
シチズンセイコーが新しく出す時計は、ほとんどソーラー電波。1万円程度〜20万円程度とラインナップも広がってきている。

電波時計は、どこでもいつでも時間を正確に測れるのか?
電波塔から発信される「標準電波」を受信して時刻を調整している。現在、日本2箇所、アメリカ、ドイツ、中国に基地局がある。全ての基地局の電波域で使えるもの(ワールドタイム)と、日本国内でしか使えないものがある。随時電波を受信しているわけではなく、夜中(たしか2時頃、4時頃)に受信し調整している。夜間は周囲のOA機器によるノイズが少なく、空気も澄んでいて電波を受信しやすい。
http://citizen.jp/cs/faq/ans/send.html

●昔みたソーラー時計はおもちゃみたいだったが?
ソーラー時計も進化している。太陽電池セルの発電効率の向上に加え、時計を駆動する装置の省エネ化も進んでいる。最近は文字盤が白いモノも発売されている。従来は、文字盤を白くすると(光を吸収出来ず)発電機能を果たせなかった。

●ソーラー電波時計は、どのメーカーが強いのか?
圧倒的にシチズンが強い。シェアは50%以上ではないか。シチズンは他に先駆けて太陽電池方式、電波時計の開発に着手し市場導入してきた。基本特許も抑えており技術的に進んでいる。セイコーも最近ようやく追いついてきたが、まだまだシチズンには及ばない。カシオは、、、路線が違う?

↓の記事からもシチズンの技術力の高さがうかがえます。
http://eco.nikkeibp.co.jp/style/eco/special/071016_solar-watch01/index.html


いろいろ取りだしてもらって比較をしました。ゴチャゴチャしていないシンプルなデザインで、安っぽすぎないモノ、という観点で比べた結果、シチズンのEXCEEDという時計に決めました。セイコーにも似たようなデザインの時計(ドルチェシリーズ)があり迷いましたが、技術話にも影響されシチズンに決定。技術的背景のお話を聞いた後に見ると、なぜかシチズンの時計の方が優れているように見えてしまいました。定価は18万円ですが、ヨドバシカメラでは10万円。ネット通販(12万円)よりも安く購入出来たようです。
http://citizen.jp/exceed/lineup/rcw/742644.html


購入後も、シチズンのことが気になってしまい少し調べていました。
↓の記事に紹介されている、「技術で美しさを支える」というシチズンのモットーに共感を覚えます。実際、ソーラー電波時計を実際に使えるデザインにするために、多くの技術を開発をしてきているのだと思います。
http://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001461&__m=1

最近、時計業界で日本勢は苦しんでいるようです。
高級路線・・・スイスなどのブランド時計が圧勝
低価格路線・・・従来は日本が強かったが、スウォッチ(スイス)が台頭。今後は中国勢も伸びてきそう
という構図のようです。

しかし今回時計を購入してみて、ソーラー電波時計は時計業界の地図を塗り替えるポテンシャルがあるのではないか、という気になりました。実用的であり、「エコ」という時代の流れにもマッチしています。基地局が増え、認知度が上がれば人気が出ると思います。そして、他国のメーカーがこの技術レベルに追いつくのは簡単ではないはず。


「日本は技術で買って経営で負ける」という議論を聞きます。確かに真実を突いていると思います。もったいない、と思うこともあります。
価値観や考え方によるところもありますが、「技術で負けて経営で勝つ」よりも深みがありカッコイイと見ることも出来ます。(経営の勉強をしている身で、こんなこと言うのも変ですが・・・)。激動の時代の中、長く続く価値とは何なんだろう?ということです。それは消費者の企業に対する「信頼」なのではないかな、と思ったりします。そして、その「信頼」を支えているのは「技術」であり「ブランド」である。先日のBOND 10周年記念式典で、大前学長が「日本のロールモデルはスイス」とおっしゃっていましたが、時計業界ではスイスが「ブランド」で日本は「技術」で一定の地位を築いてきています。


もちろん、企業としては培った技術を世の中に認知してもらい、売上・利益に繋げていくことが必要です。技術だけで儲かるわけではありませんが、技術や技術志向自身を否定することはないのだと思います。技術開発で新しいブレークスルーを生み出す仕事も大事だし、技術や技術に支えられた製品を世の中に広め、売上に貢献させるという仕事も大事です。


一消費者としては、製品の価値を語れるようなモノを持ちたい、と思うようになりました。


といいつつ、この本には結構衝撃を受けました。