一貫性ということ

BONDを受講しはじめ、Marketingと組織行動論を受講し「一貫性」というキーワードに繰り返しで会いました。

マーケティングの視点
たとえば、高級志向っぽいブランドショップなのに、
なぜかディスカウントの値札が並んでいたら「おや??」と感じることと思います。
また、健康志向が売り文句のカフェなのに、なぜか喫煙OKでも??と感じることでしょう。
店のコンセプトや売り文句と、値段や店作りが一貫していないことに、違和感を感じます(※)。

マーケティング戦略に一貫性があるからといってモノが売れるとは限りませんが、
一貫性がないと大抵の場合うまくいかない(そうです)。
「良いマーケティング戦略」の前提は「戦略が一貫していること」と言えます。

●組織行動論の視点
組織行動論でも「一貫性」というキーワードが登場しました。
・「何を目指すのか?」という企業理念
・「どんな製品 or サービスを提供するのか」というビジネスモデル
ヒエラルキー型か?フラット型か?という組織の構造
・どういう行動を評価して、どういう行動を罰するのかという人事評価制度
・暗黙のうちに従っている組織文化
全てが一貫していないと、組織の中で働いている人達は、どのように行動したら良いか困ってしまいます。

たとえば、「従業員を大切にします!」と理念で謳っているのに、実はこき使っている企業とか、、、
「新しいモノを作り出してイノベーションを生み出す」と言っているのに、ガチガチのヒエラルキー型組織で、
内部の手続きもお役所みたいだったり、とか。。。
こんな状況では、良いパフォーマンスは期待出来なさそうですし、働いている従業員の満足度も上がりません。


このように、ビジネスの世界では「一貫性」を持つということが重要です。
ところで、この「一貫性」というのは二つに分類出来るのではないかな?と思っています。

1)時間依存の一貫性:考え方やスタンスが首尾一貫しているか?
ちょっと前まで高級志向の店だったのに、今日行ってみたら急に安売り店になってしまっていたら
「なんじゃこりゃ」と思うはずです。時間依存の一貫性が成り立っていないためです。

2)構成要素の一貫性:言っていることと、やっていることに一貫性があるか?要素のベクトルは一致しているか?
上に書いたように、健康志向カフェで喫煙OKだったり、従業員重視といいながらこき使っている企業は
構成要素の一貫性が成り立っていません。

「構成要素の一貫性」はどんなシチュエーションでも成り立つことが望ましいように思います。


一方で、「時間依存の一貫性」はちょっと曲者です。
「時間依存の一貫性」が成り立つということは、たとえば、、、
組織でいうと、ずっと同じやり方で同じモノを作っているという状態。
個人でいうと、ずっと同じ考え方や態度をとり続ける状態といえます。
当たり前ですが、こんな組織や個人が成功するとは思えません。
何かを学習すると、必然的に従来の考え方や行動を変えることになります。
そして学習することがなければ、組織は新しいモノを生み出すことが出来ませんし、
個人も成長していくことは難しいです。

ところが、通常わたしたちが組織や人を見る時、無意識のうちに相手は時間が経っても変わらないだろう
(つまり「時間依存の一貫性」が成り立っているだろう)と仮定しています。
毎回、会うたびにゼロベースで「相手はどんな人だろう」と考えていては疲れてしまいます。
思考のコストを減らすことで世の中なんとか成り立っているともいえます。

そして相手が過去に言っていたことと、今言っていることが違っていると
「おや?変だな?」と違和感を感じます。下手をすると、オオカミ少年のように信用しなくなります。


つまり、
本質的には組織においても個人においても「時間依存の一貫性」は成り立ちませんが、
相手は一貫性が保たれていることを期待するため矛盾が生じることとなります。
個人は日常生活を円滑に送るために、組織は様々なステークスホルダー(顧客、従業員、株主など)
の信頼を失わないために、「時間依存の一貫性」を崩す時、つまり考え方や、
やり方を変えた時は面倒臭くても、関わりがある人にちゃんと説明してあげた方が良いのかな、と思いました。


書きながら思い出したこと(蛇足)
養老猛子先生は、現代人は「私は変わらない。情報が変わっていく。」というように
自己同一性が成り立っていることを無意識のうちに仮定しているが、
実際は体の組織の90%は新陳代謝により1年で入れ替わっている。「私は変わらない」というのは幻想である。
ということを主張されていました。(ずいぶん前に読んだので、多少違っているかもしれません。)
このように考えると、そもそも人間には「時間依存の一貫性」は成り立っていないわけですね。


(※)補足
Marketing戦略を立てる際の方法(の一例)として↓のような流れがあります。
1. 環境分析(市場調査、自社の強み・弱みの分析)により、企業の取り巻く環境や、
市場の中での自社の位置づけを明確にする。
2. STP (Segmentation, Targeting, Positioning)により、どの顧客層をターゲットにするか決め、
自社製品をどのようにポジショニングするかの戦略を定める。
3. 4P (Product, Price, Place, Promotion)により、戦略を実現するための戦術を立てる。
具体的には↓のような内容を決めます。
・どのような製品 or サービス(Product)を売るのか
・いくらで売るのか(Price)
・どのような流通形態、店舗で売るのか(Place)
・どのような売り文句にするのか、どのように宣伝するか(Promotion)

1〜3のプロセスを、それぞれバラバラに進めてしまったり、
4Pがバラバラになっていると戦略に一貫性を持たせることが出来ません。

ブランドショップの例では、店のポジショニングは高級志向なのに、
値段(Price)と店舗設計(Place)が安売り店のようになってしまっており一貫性がありません。

健康志向のカフェの例では、ポジショニングと売り文句(Promotion)が健康志向なのに、
店舗設計(Place)が一貫していません。