ビジョナリーカンパニー3 〜衰退の五段階〜

ビジョナリーカンパニーシリーズの第三段です。英題は "How the mighty fall."


これまでは「いかにして偉大な企業になるか」に焦点を当てていたのに対して、今回は「偉大な企業」が衰退してしまうのはなぜなのか?に焦点を当てています。


これまでの作品と同様に、膨大な調査・分析に基づき、対象企業と比較を行い得られた知見を一般化しています。その上で「調査で見つけた要因は相関関係であって因果関係ではない」と断っています。著者が言うように、現実の世界では因果関係を主張することは不可能ですが、比較分析を行うことで真実に近づいているものと思います。サイエンスとは異なり実験が出来ない企業を分析する上でも、サイエンティフィックに分析をしようとしていることで説得力が増しているように思います。


企業が衰退する要因として直観的に思いつくのは、「従来のやり方に安住して変化を嫌ったのではないか?新しいアイディアを試さなくなったからではないか?」ということです。今回の分析からは、”成功から生まれる傲慢”という要因は認められるものの、”新しいものを試さなかった”というよりも”新しいものを試し過ぎた”ことが衰退の重要要因の一つとして取り上げられています。


第二段階(規律なき拡大路線)では、規模の拡大や新規事業への進出が行われます。またイノベーションも重要視され、多くの新製品が生み出されたりもします。そのため一見好調なのですが、地に足がついていないため何か問題が起きると一気に損失が拡大してしまいます。


第四段階(一発逆転への追求)では、次々に新製品を打ち出したり、新たなビジョンを掲げて従来事業と関係ない新規事業を開拓したり、外部からCEOを呼んできたり。一発逆転を狙った打ち手は一見華やかですが、結局はモノにならずに資金だけを使い、衰退を加速させてしまいます。


偉大な企業が衰退するのは、新しいことをやらなくなったからではなく、成長が速すぎたり、機会を求めすぎたりということが原因だと分析されています。


このような傾向が一般的かどうか、という点に興味があります。
・偉大な企業だからこそ起こるのか
偉大な企業は新しいことを開拓してきたからこそ偉大であり、その方向性が狂うと衰退してしまうのか。だとすると、偉大で無い通常の企業が衰退する理由は違うのか
アメリカ企業だからこそ起きるのか
(国籍で分ける意味はあまりないかもしれませんが)金融市場からの要求が厳しく新しいことを試さざるを得なくなるプレッシャーが強いからなのか


日本企業や最近のコダックの例を見ると、数の多さだけで考えると「変われなかった」ために衰退する企業の方が多いのかな、と思いました。

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階

XMindというソフトでマインドマップ風にまとめてみました。

衰退の5段階(イメージ図)