Physics for future presidents
「今この世界を生きるあなたのためのサイエンス」を読みました。
原著名は"Physics for future presidents."
こちらの方が内容とマッチしています。
カリフォルニア大学バークレー校での文系学生向けの物理学講義をまとめた本です。
現実社会でリーダーが意思決定を下す上で知っておくべき事実、コンセプトを解説しています。
「原子力」「エネルギー問題」などホットな話題も詳しく書かれており、
今の日本で読むことにも価値があります。
たとえば、チェルノブイリでの事故に関して、、、
今、まさに日本政府が直面している状況です。
判断をするためには、まず事実をちゃんと認識することが必要になります。
(引用)-----------------------------------
「ここで、難しい質問をします。チェルノブイリから住民を避難させたことは、正しかったのでしょうか?
(中略)
もし避難しなければ、45レム(=450ミリシーベルト)の放射線を被ばくすることになり、あなたの発ガン率は20%から21.8%に上がります。もし選択の自由を与えられたとしたら、1.8%のリスクを避けるために、自分の家を捨てて逃げますか。
(中略)
もしあなたが指導者だったら、住民を強制的に避難させるのと、本人の自由意思にまかせるのと、どちらが正しいと思いますか。
...(中略)
この難問に対して、わたし自信は答えを出すことができません。これは、科学の問題ではありません。科学にできるのは、選択の結果がどうなるかを示すことです。しかし、わたしたちは熟慮の上で厳しい決断をしなければなりません。」
(vol1. p129-p130)------------------------------
また、エネルギー問題に関しては、
「ここで言う省エネとは、暑い夏の日にエアコンの出力を下げることでも、真冬に暖房の温度を上げる代わりにセーターを着ることでもありません。
省エネの成果を出すためには、快適な省エネ法でなければならない、というのが私の持論です。」
事例として、
・省エネ冷蔵庫・・・技術開発により1974年と比べ、23ギガワット分の省エネ効果があった。
・白熱電球→蛍光灯(→LED)で大幅な省エネ効果あり。
などが挙げられています。
(vol2.p167-p175)
水素社会、太陽光発電など次世代エネルギーという響きは魅力的ですが、
こういった地道な努力による省エネ効果も無視できないようです。
我慢を強いる省エネは長続きしない、快適で楽しく省エネ出来るインパクトがある方法で無いと続かない、
と考えていたので納得です。
(エコポイントは消費活性化のための位置づけとしか捉えていませんでしたが、
実は本当に省エネ効果があるのかも??)
かなり分かりやすく記載されており、本質を捉えた議論が展開されていると思いました。
- 作者: リチャード・A.ムラー,Richard A. Muller,二階堂行彦
- 出版社/メーカー: 楽工社
- 発売日: 2010/09/02
- メディア: 単行本
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