昭和史(1925〜1945)

先日、ライフネット生命の出口社長の講演会に参加した際に、出口社長が紹介して下さった『昭和史(1925-1945) 半藤一利:著』を読みました。日露戦争の後、太平洋戦争がはじまり終戦を迎えるまでの歴史が描かれています。

↓出口社長の講演会、ちきりんさんとの対談の記事
http://d.hatena.ne.jp/ushikubou/20110514/1305424412

「ちきりん」さんも、この本に関する感想をかかれています。非常に分かりやすいです。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20110501

当時の人々が語った言葉が引用されており、戦争時代を生きた人々が何を考え、どのように判断してきたのかが、よく分かります。軍の上層部やマスコミなどが、いかにアホな判断をしてきたかが、書かれており読みながら笑ったり呆れたりしてしまいます。


たとえば、、、
当初、海軍は開戦に反対であり、日・独・伊の三国同盟に参加することに反対していました。当時の情勢を考えると、これは合理的な判断。もし、三国同盟に参加すると、アメリカと衝突リスクが極めて高かったのです。すると、石油を始めとした輸出規制を受けることに加え、資源に大きな格差があり、勝てる見込みがないアメリカと戦争になる可能性が高いと考えられます。

しかし、結果的に海軍も三国同盟に賛成し、日本は一気に戦争への道に転げ落ちていきます。判断した理由は、
・海軍があくまで反対すると、当時の近衛内閣は総辞職することになり、海軍は内閣崩壊の責任はとれないから「しょうがない」。と海軍topが判断。
三国同盟を結べば、裏取引により予算を多く獲得出来る条件を陸軍につきつけることが出来ると考えた。
・もしかしたら、アメリカやイギリスと戦争にならないんじゃないかと根拠なく楽観的に考えていた。
という、どうしようもないものです。

そして、いざ戦争が始まりアメリカから石油の輸入禁止となると、海軍topは、「いやぁ、勝てるかどうかもおぼつきませんな」と、いけしゃあしゃあと無責任に言う。


他にも、、
ノモンハン事件後の反省として書かれた文書。「ノモンハン事件の最大の教訓は、国軍伝統の精神威力をますます拡充するとともに、低水準にある火力戦能力を速やかに工場せしむるにあり」。まずは精神論、次に兵器のパワー。順番が完全に逆だろうと。しかし、当時の人の感覚からすると、ここに「火力・・・」の一文を入れるのは物凄く大変なことだとか。普通の人が書いたら「何を考えているんだ!!」とドヤされるところ、だったようです。精神論では何も解決されないのに。。。


また終戦直前に、(すでに日本攻撃の準備を進めていた)ソ連をあてにして、何とか仲介してもらおうと無駄な努力を続けていたこと、など。


さらに、
日本艦隊現場のトップの山本五十六が、「こんなに資源に差があったらアメリカに勝てっこない。開戦すべきではない」と直訴しても海軍トップは「でも、政府が開戦すると言ってるからしょうがないよねぇ」と答える。そして、開戦がさけられないなら、奇襲攻撃(真珠湾)して早々と講和に持ち込むしかない、と提案してもなかなかGoを出してくれない。


最近、似たようなニュースを見ましたね。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110526-OYT1T00740.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110527/dms1105271638028-n1.htm


しかし、ふとした瞬間に「自分はどうなんだろ? 今の組織はどうだろ?」ということに気付くと背筋が寒くなります。

客観的な判断ではなく、組織内の摩擦を避けるための判断をしているのではないか?
精神論・やる気の問題で全てを片付けようとしていないか?
世の中や競合他社の正しい情報を手に入れ、キチンと判断しているか?

さらに言うと、
自分が当時の政府や軍部の人間だったとしたら、正しい判断が出来たのか?

どの問いにも自信を持って答えられないのです。


この本の最後に以下のような言葉が書かれています。まさにその通りだと思います。
よく「歴史に学べ」といわれます。ただしそれは、私たちが「それを正しく、きちんと学べば」、という条件のもとです。その意志がなければ、歴史はほとんど何も語ってくれません。


昭和史-1945 (平凡社ライブラリー)

昭和史-1945 (平凡社ライブラリー)

終戦前のアメリカ、ソ連、日本の思惑に関してはコチラに詳しく書かれています。

暗闘―スターリン、トルーマンと日本降伏

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