「わたしを離さないで」

わたしを離さないで

わたしを離さないで

カズオ・イシグロの本を初めて読んだ.淡々とした語り口だが情景,登場人物の動きや考えをリアルに思い浮かべることが出来る.


少年少女時代を思い返す物語かな?と思って読み進めると,所々不自然な点に気がつく.
日常の風景をリアルに描写しているのに,どこか現実離れしているのだ.
そして,次第にその不自然さが明らかにされていく.


読みながら,登場人物の従順さを歯がゆく思った.その時ふと,自分も同じではないのか,と気がつきぞっとした.
ある枠組みの中で向上しようと努力しているが,その枠組みから逸脱するようなことはしない.
もしどこかに傍観者がいるとしたら,同じように歯がゆく感じ,愚かだと思うのだろうか.


しばらく時間をおいて,もう一度読み返したいと思う.